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コラム

ニューパブリックパートナーズ代表・梅村雅司のプライベートコラムです。団体設立の裏側にあるストーリーを語り、個人の思いなどを書きたいと思います。

■プロフィール
最初に私のプロフィールを紹介しておきます。明治村で知られる愛知県北部の観光都市、犬山市で生まれ、高校までを過ごす。立教大学法学部を卒業後、1984年に東京都庁に就職。出先機関と本庁で主に人事・総務などの管理系の仕事を担当する。庁内で私的勉強会を企画開催したり、研修講師を務めたりもする。その後、民間企業に転職し(外資系のコンサルティング会社、ITベンダー)、人事・総務、マーケティング、コンサルティングに従事。2002年にニューパブリックパートナーズを設立する。
その間、グロービスマネジメントスクールなどの外部研修・セミナーにも積極的に参加。行政経営フォーラムで行政プロ人材育成について議論し、慶應義塾大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科の科目履修)でケースメソッド教授法およびケースメソッド授業開発マネジメントを学ぶ。さらに、日米で公務員の人材開発と行政大学院教育の調査を行い、その成果を共著で出版する(「行政人材革命」)。

■行政経営スクール設立の動機
スクール発想の原点は私の個人的体験から来ています。地方公務員として社会人のスタートを切った私は、約5年間役所で過ごしました。そのとき感じたのが、“ぬるま湯”感です。中にいると居心地がいいが、外に出ると風邪を引きそうな感じ。公務員なら誰しもが感じる役所特有の組織風土ではないでしょうか。仕事は忙しいが、厳しさや切迫感が乏しい。考え方が内向きになりやすく世間の常識とずれてくる。競争も成長も意識することなく、スピード(時間)やコストの感覚が育たない。こうした甘い体質が徐々に自分の中に染み付いてくるのを感じました。能力が開発・強化され自己成長しているという実感が持てませんでした。私の場合と同じように、長く役所で働いていると能力が錆びついていくという危機感を持つ公務員も少なくないと思います。

現在も当時と比べて事情はさほど変わっていないと元同僚や各地の公務員から聞いています。行政改革が続き人員は減らされ仕事はより忙しくなっているが、不十分な人材育成環境は昔のままと言います。研修、人事配置ともに従前の運用が続いている。仕事のやり方や職員意識にも大きな変化は見られない。行政経営が重視される時代となり、それを担いうる人材を育てなければならないにもかかわらず、そこに力は入っていないようです。最近になってようやく人材育成方針を作り始めましたが、実効性のあるものは果たしてどれくらいあるでしょうか。

自分の体験を振り返り今後の行政を考えたとき、こうした現状を早く変えなければならないという強い思いが私の中に湧き上がってきました。企業人材に比べ行政人材は職務能力の開発余地がまだ大きくあります。勘と経験と努力だけでは埋めきれない大きな溝が社会との間でできています。行政人材を含めパブリック分野にかかわる職業人がその能力を高めなければ、公共サービスは不満が多いままで、住みよい市民社会はいつまでも訪れません。そこで、公共人材の能力開発を見直し積極的に支援するため、企業や海外の事例を参考に専門実務スキルを身につけられる場を提供できないかと考えたのです。

二つの出会いも大きなきっかけです。一つはグロービスとの出会い。ここは社会人向けにハーバード式のMBA教育をおこなうアフターファイブのビジネススクールです。90年代初めにベンチャー企業として発足し、たちまちのうちに多くの企業人らの支持を得ました。私も通ってみて、その素晴らしさに感激したのを覚えています。
もう一つは行政経営(パブリックマネジメント)との出会いです。行政経営フォーラム代表の上山信一氏らが日本に紹介したもので、企業経営の理念・手法を応用することでパブリック部門の改革を図るという考え方です。旧来型の行政改革に空虚さを感じていた私は、この考え方の新鮮さに心奪われました。これまでの行政に欠けていたものがはっきりと見えてきました。米国では行政大学院で体系的に教えられていることも分かりました。これを日本で広め、公務員がこの能力を身につければ行政は変わるかもしれないと感じたのです。
米国には行政大学院で専門職業人を養成するという一つのモデルがあり、その分野のリーダーは何を学び、どのようなスキルを修得すればいいかが確立されています。日本は組織内でのOJTが主流でした。政策系大学院が徐々に増えてきましたが、これらは公共人材の能力開発にまだ大きな貢献を果たしていませんし、今後も果たせるかどうか定かではありません。行政経営を教えるカリキュラムを組む大学院は極めて少ない現状です。

これら具体的な取り組み方法が先の問題意識と結びついたとき、行政経営スクールの構想が生まれたと言えます。グロービス型のモデルで行政経営を学べるスクールを作ったら素晴らしいに違いない。行政研修の変革を促す一歩になりうるのではないかと思いました。
そして上山信一氏の主催する行政経営フォーラムに参加して、多くの実務家や研究者らと議論をおこない講座開催の試行を重ね、スクールのニーズと可能性を確信するに至り、事業として立ち上げることにしたのです。

■スクール構想
今後の行政経営を担うのは、プロ人材だと私は考えます。プロフェッショナルとは組織に頼らず、自分で仕事をデザインでき、結果を出せる人材のこと。自立性と主体性が欠かせない資質であるとともに、職務固有の専門知識・スキル、そして職務や所属にとらわれない普遍的能力(問題解決能力、イノベーション能力など)を持つことが必要です。そうした人材を育成するには、従来型の人事・研修では無理があるでしょう。組織絶対の価値観を疑い、組織と個人の関係も問い直さなければなりません。

では、どのように育成するか。行政経営フォーラムでの議論や各地の公務員へのインタビュー、米国の行政大学院調査などを通じて一つの結論が見えてきました。カリキュラムと教育法を工夫することで、専門知識習得はもちろんのこと、問題解決能力や対人能力の訓練、思考・行動特性の理解や意識転換にも効果が出せます。実務に直結したマネジメント領域のテーマに特化し、行政実例を自分で分析して成功要因や問題解決策を考え、クラスディスカッションやロールプレイングで弁論・交渉の対人訓練をおこない、異質の人材に触れ合う環境を作ることができれば、かなり統合的なプロフェッショナル能力開発の場となりうるに違いありません。
あとは経済的・時間的負担の軽さと門戸の広さ、学習の動機づけなどの条件を揃え、理論と実践に通じた講師を集めれば、行政プロ人材を育成するに相応しい教育プログラムとなります。こうした機会・プログラムの提供者としては、まず大学院が想定されますが、大学院だけに限られるわけではありません。

大学院で学ぶ時間的・経済的余裕がない人の方が圧倒的に多いわけですから、彼らのために能力開発の機会を別に用意することが重要になります。行政経営スクールはそうした場を提供するために開設しました。行政経営について学ぶ場がないことに不満だった皆さんや、職場で与えられる研修に飽き足らない人たちに向けて、個人の主体的なキャリアデザインに役立つような公共・非営利分野のマネジメントスキル開発プログラムを創造していきたいと考えています。能力開発とナレッジ共有、官民交流のプラットフォームとして大いに活用してほしいと思います。

行政・政策系大学院の卒業生は職場に戻ってから大学院で身に付けたスキルを生かせないという声を調査の中でよく聞きました。そうしたスキルを生かせる仕事や部門は限られているせいもあるようです。しかし、せっかく苦労して身につけたスキルを眠らせるのはもったいない話です。アウトプットする場がないと、いずれスキルは失われていくでしょう。そうであるならば、そのスキルを教える場があればいいのではないか。大学院へ行きたくても行けない多くの人たちへ還元することは大変意義のあることです。教える側にも教えられる側にも双方にメリットがあります。

私は行政経営スクールでケースメソッドを全面的に展開するつもりです。その前提としてケース教材の開発と蓄積を重点的に進めていきます。ケースの蓄積こそが行政経営教育の基礎を固めるものと考えるからです。それは行政経営知識の集積になり、厚みになります。そして、行政研修の転換を促し水準を引き上げることにつながっていくでしょう。
米国のプロフェッショナルスクールには豊富なケースの蓄積が見られ、それが教育に有効に活用されていることにもっと注目すべきです。しかし日本ではこの面が非常に遅れています。このことは高度専門職養成教育が米国に比べて遅れていることと無関係ではないでしょう。ビジネス分野に限らず、公共・非営利分野でも多くの日本語ケース教材が作られる必要があります。ケースメソッドの導入とあいまって、そこから新しい実践スキル教育が始まっていくと私は信じています。

■NPOへの思い
行政経営スクールは講座を開催して利益を上げるためだけに開設したものではありません。それが目的ならばNPOではなく会社にした方が経営はやりやすくなります。なぜNPOにしたのか。最終ゴールを上質で満足度の高い公共サービス実現と市民社会の形成に置いているからです。そのためには公共・非営利分野のマネジメントクオリティを向上させなければならず、それを担い支えていく人材育成・能力開発が欠かせないと考えたからです。こうしたミッションを達成するためにスクールはあります。

スクールでは単なる知識の伝授をおこなうのではありません。NPOという場を利用して講師と受講生の一方的関係を超えた双方向的な関係性を築き、フラットな立場で相互に学びあうコミュニティの形成を目指しています。いわば「学びの共同体」です。これは行政経営スクールの特徴の一つであるケースメソッドがまさに目指すところと一致します。ディスカッションを通じて経営意思決定の疑似体験をし、お互いの持つ知見を共有しあうのがケースメソッド授業です。

受講生はクラスで学びあい、職場に戻って実践し、その成果をまたクラスにフィードバックします。それは講師としてかもしれません。人に教えることで学びはより深まります。受講生は講師から学び、他の受講生からも学び、そして講師も受講生から学びます。常に学びの循環が生まれるような場が我々が目指すコミュニティです。

■団体名とマークの由来
団体名とマークの由来についても説明しておきましょう。行政経営スクールの運営母体が「ニューパブリックパートナーズ」です。この名前は、新しい時代の新しいコンセプトに基づくパブリックセクターのあり方を考え、それを支える担い手となり、そこで活躍する人材を広く社会に供給していくためのパートナーとなりたいという願いを込めて付けたものです。また、行政経営のベースとなるニューパブリックマネジメント(NPM)の考え方を普及・推進し、行政経営に関連するサービスを提供していく団体であるということからの連想の意味合いも持たせました。

一方、ダブルウィングのシンボルデザインは、ハイ・フライヤー(High Flyers)を目指す人を育成するという団体理念を形にしました。「ハイ・フライヤー」という言葉は南カリフォルニア大学教授モーガン・マッコールのリーダーシップ開発を扱った同名著作によるもので、高く跳ぶ人、つまり組織のトップリーダーになる人材をイメージさせる言葉です。公共・非営利分野のそうした次世代リーダー育成に懸ける思いを託して制定したものです。また、ブランドカラーのワインレッドとグレーは、熱き情熱と冷静な思考を意味する「ウォームハート&クールヘッド」の表現です。

名前にもマークにも私なりの思いが反映されています。参加者が広がり日本中でこれらの名前とマークが知られるようになる日が一日も早く来ることを願っています。多くの皆さんの参加と応援をよろしくお願いします。

 
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